Sunday, October 29, 2017

エミリオ・インソレラ

エミリオ・インソレラ

執筆:Leonard Broersen

映画監督のエミリオ・インソレラは、エンターテメントとドキュメンタリー性を備えた映画を制作するにあたり影響を受けた人々の母国に住み、まさに自身の望んだ人生を歩んでる。
エミリオ氏はアルゼンチンに生まれ、イタリアで育ち、アメリカで教育を受け、そして過去2年間は日本に住んでいる。エミリオ氏の映画制作会社” Pluin Productions”では可能な限り多くの「手話言語コミュニティー」を世間に知らせる事を目標としている。エミリオ氏は「視覚コミュティー」と呼ぶ方が好ましいと言う、このコミュニティーは障害者と区別され、同情されることを望まない新しい世代である。“Pluin Productions”はスレレオタイプの象徴と言えるであろう、ろうの生徒と教師が恋に落ちるという内容の80年代の映画「愛は静けさの中に」(のちにエミリオ氏は明らかに聴覚者により指導されているだろうと教えてくれた)と全く反対の長編映画「サイン・ジーン」を制作している。映画では、手話の方言まで100%正確に「視覚コミュニティー」を描いているという。筆者は今まで手話に方言があるとは知らなかったため、驚いたのだが、手話の話者から見ればイタリアの南や北の方言まで分かるそうだ。映画で手話を話しているように見せかけている俳優も、話者からすれば、見せかけているという事は一目瞭然だそう。これは手話を話すものにとって、とても腹立たしいものでる事には違いない。エミリオ氏の目標はこういった問題を正す事であると言う。
映画サイン・ジーンの制作は波紋を呼び、あるイタリア人言語学者は「視覚コミュニティーの積極的行動を象徴している」と言及している。
手話を使って様々な超能力を使う事ができるろう者が映画の主人公だ。
元々は短編映画で始まったが、参加したいとの申し出が相次ぎ、エミリオ氏は長編映画へ切り替えを決めたという。エミリオ氏は” Deaf Space”” Viable and Deaf Japan”、カゴメからの出資を映画制作に1円足りとも残さず、全て注ぎ込んだとの事。
筆者は予告編を見させていただきましたが、ヘリコプターによる空中撮影や武道シーン、特殊効果は低予算のクオリティを遥かに超えているとの印象を受けました。
ヤマモトカズユキ、ババヒロシ、ダニー・ゴング、チョン・チェンを始めとするたくさんの専門家や俳優、プロダクションの方々全員に感謝し、今からは映画のサウンド作りを始める予定であるとエミリオ氏は話してくれました。
撮影はこれで終了し、”Pluin Productions”は今から映画の最後の仕上げを行うため、サウンドエディターや音楽家を探しているそうです。
来年、様々な国際映画祭で上映される予定の映画に参加出来るだけではなく、あなたの技術を国際的なメディアに知ってもらえるチャンスでもあります。
エミリオ氏はアメリカや日本のテレビ番組にも出演しており、間もなく朝日新聞にも掲載される予定です。



サイン・ジーンの父



サイン・ジーンの父

執筆:Eija Niskanen
写真:Daniel Goertz

エミリオ・インソレラが”Transculture Kid”、すなわち「異なる文化背景の子供」に属しているというのは周知の事実である。
エミリオ氏が腰を据え、今や第二の故郷と呼ぶ大阪にて、今現在、新しいアクション映画「サイン・ジーン」を独自で制作しているという。最新のプロジェクト下では武道、ヤクザといった内容、さらにヘリコプターによる追跡などを取り入れているが、それでいて、ろう者とサイン・ジーンが作品の中心となるよう制作を進めている。もちろん、題名にもあるように手話言語(サイン・ランゲージ)、さらに言えば、何ヶ国語も存在する手話言語が、映画の主題だ。
サイン・ジーンの監督エミリオ氏とはNHKスタジオに向かう途中、渋谷にある東京ジャーナルにてお会いした。監督は陽気な方で、それでいてとてもユーモアに溢れた方であった。筆者はエミリオ氏自身とそして作品制作の経緯について伺った。
エミリオ・インソレラは1979年アルゼンチンにて、イタリア人の父とアルゼンチン人の母の元に生まれる。そして世界中のろう者が学んでいる事で有名な、ワシントン・ギャローデット大学にて映画製作を学び、若き日のエミリオ氏は短編映画を自身で作りたいという意欲を掻き立てられたと言う。そして今現在、大阪にて初の長編映画を作成中。奈良、京都、姫路、ニューヨーク、メリーランドなど、様々な国と地域にて撮影を行っている。
映画サイン・ジーンでは、冒頭から、ろうアメリカ人2名が大阪で殺害されるというように、アクション要素の高い映画となっている。その殺害事件の後、捜査の任務へと特殊部隊の二人組が直ちに日本に派遣される事となる。その二人組の主人公は、一人は自身もろうであるエミリオ氏、もう一人はろうの両親を持つダニー・ゴング氏が演じている。捜査はやがて、ヤクザとの戦いへと発展していくのだが、その過程で二人は難しいシナリオを演じきっている。
映画の中で、登場人物の多くは秘密の力を発揮し、習得していく。秘密の力には、例えば『閉じる』という手話をすれば、扉が閉まる。また、『武器』という手話では、実際に手が武器となり、火を噴出させるといった能力が存在する。映画のワンシーンでは、漢字が重要な意味として使われているが、それはもちろん漢字の多くは実際の形から作られていることが多いという事が関係しているようだ。
また、言うまでもなく、登場人物の持つこれらの特別な力は映画のタイトルでもある『サイン・ジーン』、すなわち、突然変異のサイン遺伝子により発揮されている。想像と現実の世界を織り交ぜる事で、この映画はアクションとSFの二つを要素を網羅している。
サイン・ジーンの俳優やクルーには、ろう者や、ろう者でない方。また、専門家から一般人。そして、日本人、アメリカ人、ヨーロッパまたはアジア人と幅広い人々が存在しているため、映画撮影中、監督の指示は様々な言語に翻訳された。手話には様々な国の言葉があり、エミリオ氏はアルゼンチン、イタリア、アメリカの手話を話すが、最近では日本語手話も少しづつ習得しているというから驚きである。彼の指示は日本語手話、聴覚者に対しては日本語や英語に翻訳される。
映画のキャストは全て人から人への紹介だけで集まったという。エミリオ氏は特にネイティブの手話言語話者を探していたそう。それは、エミリオ氏はろう者を主題とした映画の中で、実際にろう者によって作成されたものは、ほとんどないからである。一般的に映画の中で、ろう者は哀れな被害者役を演じるという傾向に対して、エミリオ氏は強く嫌悪感を示している。そして、それらの映画は、常にろう者に対して、ろう者でないマジョリティーの考え方を反映している。
しかし、サイン・ジーンの映画の中では、ろう者の視点から、実際のろう者の世界を映し出している。もちろん、監督にとってろう者の世界は哀れな犠牲者の集まりではなく、尊厳を持った人々の集まりである。王道の映画の中では、ろう者がろう者ではない人々にとってどう見られているのかという点を描写しており、ろう者から見ると大げさで不自然に他ならない。映画サイン・ジーンではろうに対する問題は扱わず、ろう者、またろう者の家族を持つ人々による、エンターテイメントアクション映画を作成するという事に焦点を置いている。
それに加え、異なる手話言語が映画の中で使われる事は、コミュニケーションに彩りを与え、ユーモアに溢れる映画につながっている。言うまでもなく、映画サイン・ジーンはろう者でもろう者でなくても、全ての人々が楽しめるエンターテインメント映画となっている。放映される国では、その国の字幕が追加される予定です。
エミリオ氏のにはもう一つの目標があると言う。それは様々な国籍間において、文化融合を発展させる事である。

その中で、限られた予算の中で映画を作成させる技術を伝えたいと考えており、低い予算であっても映画を作成するよう日本人ろう者へ勧めている。もちろんエミリオ氏が今後日本を離れた後もいつでも支援を行う考えである。サイン・ジーンは全く新しい、視覚的なコミュニケーションを映画で表現している作品となっています。